【高橋芳朗】
本日はこんなテーマでお送りします! 「祝・リリース40周年〜ドゥービー・ブラザーズのAOR名曲『What a Fool Believes』がJ-POPに与えた影響を聴いてみよう!」。アメリカのウエストコーストロックを代表するバンド。ドゥービー・ブラザーズの大ヒットアルバム『Minute By Minute』がリリースされてこの12月でちょうど40周年を迎えました。
【ジェーン・スー】
はー、40年!
【高橋芳朗】
それを記念して、このアルバムに収録されている全米ナンバーワンヒット「What a Fool Believes」がいかにのちのポップミュージックに影響を与えたか、その一端をJ-POPに絞って紹介していきたいと思います。もうね、この曲にインスパイアされたと思われる曲は洋楽邦楽問わずめちゃくちゃたくさんあるんですよ。それだけで特番が組めちゃうぐらい。
【ジェーン・スー】
うん、2時間特番いけますね。
【高橋芳朗】
ホント、『今日は一日「What a Fool Believes」三昧』とかできる勢い。
【堀井美香】
フフフフフ、そんなに!?
【高橋芳朗】
ぜんぜんいけます。じゃあ、まずはその名曲「What a Fool Believes」を改めて聴いてみましょうか。この曲、作者はドゥービー・ブラザーズのボーカルのマイケル・マクドナルドと「Footloose」でおなじみケニー・ロギンスとの共作になります。ケニー・ロギンスによるバージョンもこのドゥービー版の5ヶ月前に出ているんですけど、ヒットしたのはこちらの方でした。全米ナンバーワンヒットにしてグラミー賞レコードオブジイヤー受賞曲です。
M1 What a Fool Believes / Doobie Brothers
【高橋芳朗】
堀井さんのVネックのモヘアセーターが光ってますね。この曲にばっちり。
【堀井美香】
モヘアがお役に立ったようで。
【ジェーン・スー】
堀井さんがポプラ並木を歩いているところがイメージできたわ。
【堀井美香】
よーし、モヘア光線、えいっ!
【高橋芳朗】
はい、ありがとうございます(笑)。ではこれから「What a Fool Believes」にインスパイアされたと思われる日本のポップスを紹介していきますが、この一聴した限りではなんの変哲もないように思えるシンプルなリフがAORやシティポップのイメージを決定づけたということがよくわかると思います。これはもうポップミュージックの歴史に残る発明と言っていいんじゃないでしょうかね。時代/世代別に3曲紹介します。
【高橋芳朗】
というわけで「What a Fool Believes」のインスパイア曲ですが、いちばん多くつくられたのはヒット直後の1980年代前半。今日はそんななかから映画『私をスキーに連れてって』の主題歌、松任谷由実さんの「サーフ天国、スキー天国」を聴いてみましょう。
実はユーミンさん、以前ご自身のラジオ番組のイントロ特集で「What a Fool Believes」を選曲したことがあるみたいなんですよ。曰く「いままでの音楽体験を振り返っても衝撃的なイントロだった」ということですから、きっとこの曲には強い思い入れがあるんじゃないかと思います。実際、「サーフ天国、スキー天国」は「What a Fool Believes」の影響をユーミン流ポップスへと見事に昇華した傑作と言っていいんじゃないでしょうか。
【ジェーン・スー】
やっぱり時代だと思うんだけど、いままでかけた2曲にはなかったモラトリアム感みたいなものがすごくあるよね。「What a Fool Believes」にインスパイアされてるのにこの甘噛み感、いままでの曲にはなかったからさ。
【高橋芳朗】
うんうん。ユーミンや岡村ちゃんに比べるとモヘア感は後退していますよね。というわけで「What a Fool Believes」に影響を受けたと思われるJ-POPを3曲聴いてもらいましたが、実はこの番組でも「What a Fool Believes」インスパイア風の音楽がちょくちょく流れているんですよ。聴いてもらいましょうか。
(KIRINJI堀込高樹による番組ジングルが流れる)
【高橋芳朗】
これはKIRINJIの最新アルバム『愛をあるだけ、すべて』に収録の「非ゼロ和ゲーム」をベースにしたジングルなんですけど、これも「What a Fool Believes」感あるんじゃないかと。
(11:08) Never Givin’ Up / Al Jarreau
(11:25) Mr. Briefcase / Lee Ritenour
(11:36) On The Boulevard / The Manhattan Transfer
(12:18) I Just Want to Love You / The Clarke / Duke Project
(12:51) ブックエンド / 大橋純子
12/4(火)
(11:07) Lookin’ Through The Windows / Jackson 5
(11:20) I Love Every Little Thing About You / Stevie Wonder
(11.32) Could This Be Love / The Voices of East Harlem
(12:12) Thanks for Saving My Life / Billy Paul
(12:50) 外はみんな / 吉田美奈子
12/5(水)
(11:05) Ooh-Wakka-Doo-Wakka-Day / Gilbert O’Sulivan
(11:21) Oh Yoko! / John Lennon
(11.36) Honky Cat / Elton John
(12:14) Gotta Get Up / Nilsson
(12:50) 恋の汽車ポッポ / 大瀧詠一
12/6(木)
(11:02) Iko Iko / Dr. John
(11:22) Dixie Chicken / Little Feat
(11.38) How Much Fun / Robert Palmer
(12.12) Kojak Columbo / Nilsson
(12:23) Liverpool Fool / Browning Bryant
(12:50) お先にどうぞ / かまやつひろし
12/7(金)
(11:03) Best of My Love / The Emotions
(11:20) Keep it Comin’ / KC & The Sunshine Band
(11.38) Boogie Oogie Oogie / A Taste of Honey
(12.11) You Can Get By / Chic
(11:08) Special to Me / Bobby Caldwell
(11:23) That’s the Way of Love / Pieces
(11:33) Nobody Else / Robbie Dupree
(12:15) Ace of Hearts / Average White Band
(12:25) Time / Breakwater
12/11(火)
(11:05) Why Do Fools Fall in Love / Kenny Rankin
(11:22) Hey Hey Baby / Ben Sidran
(11:38) That’s The Way It’s Gotta Go / Hirth Martinez
(12:12) Monkey See Monkey Do / Michael Franks
(12:48) オン・エニイ・サンデイ / ハイ・ファイ・セット
12/12(水)
(11:05) I Want You to Want Me〜甘い罠〜 / Cheap Trick
(11:23) She Did It / Eric Carmen
(11:36) Penny in My Pocket / Pilot
(12:15) Birmingham Blues / Electric Light Orchestra
Sam & Dave – Hold On, I’m Comin’ (1966)
12/13(木)
(11:05) Hold On, I’m Comin’ / Sam & Dave
(11:23) Show Me / Joe Tex
(11:33) Memphis Train / Rufus Thomas
(11:38) Funky Street / Arthur Conley
(12:13) See Saw / Aretha Franklin
(12:50) Who’s Making Love / Johnnie Taylor
12/14(金)
(11:05) I’m Coming Out / Diana Ross
(11:22) Take it to the Bossman / Narada Michael Walden
(11:39) Look Up / Patrice Rushen
(12:10) Love Festival / Kool & The Gang
さっそく1曲目、ベン・ピラニの「Light of My Life」。ベン・ピラニはシカゴ出身のシンガーソングライターで、イギリスのH&Mのコマーシャルで曲が使われたことによって注目を集めました。これはぼんやり聴いていると60年代当時の音源と聴きまちがえてしまうレベルです。
M1 Light of My Life / Ben Pirani
【高橋芳朗】
2曲目はジョーイ・ドシクの「Don’t Want it to Be Over」。女性シンガーのココ・Oとのデュエットになります。ジョーイ・ドシクはロサンゼルス出身のシンガーソングライターで、聴けばすぐにわかると思いますがマーヴィン・ゲイに非常に強い影響を受けている歌い手。この「Don’t Want it to Be Over」では、そのマーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲の愛らしい恋人ムードを見事に再現しています。
M2 Don’t Want it to Be Over feat. Coco O. / Joey Dosik
【高橋芳朗】
おー、現状ブース内ではいちばん人気ですね。では最後、4曲目はヴルフペックの「Half of the Way」。テオ・カッツマンというボーカリストをフィーチャーしています。ヴルフペックはロサンゼルス出身のファンクバンドで、以前KIRINJIの堀込高樹さんがゲストでいらした際にフェイバリットに挙げていました。ジェーン・スーさんの誕生日に彼らのCDをプレゼントしたこともあるんですけどね(笑)。
【ジェーン・スー】
出た!
【高橋芳朗】
フフフフフ、覚えてらっしゃるでしょうか?
【堀井美香】
出た! また聴いてないやつだ(笑)。
【ジェーン・スー】
聴いてないやつだ(笑)。
【高橋芳朗】
ヴルフペックに関しては全編レトロソウルではなく、曲によってはディスコだったりニューオーリンズだったり音楽性のレンジが広いんですけど、この「Half of the Way」では60年代ソウルの影響が強く打ち出されています。
(11:05) Too Hot / Kool & The Gang
(11:23) Girlfriend / Michael Jackson
(11:34) Old-Fashion Love / Commodores
(11:40) You Can’t Change That / Raydio
(12:15) We’re Goin’ Out Tonight / Cameo
(12:49) ピュア・マインド / 上田正樹
12/18(火)
(11:09) Don’t Ask Me Why / Billy Joel
(11:24) If You Believe / George Harrison
(11:38) Shake It / Ian Mattews
(12:13) Think About Me / Fleetwood Mac
(12:24) Romeo’s Tune / Steve Forbert
(12:50) さよならベイブ / 佐野元春
12/19(水)
(11:05) Driving Home for Christmas / Chris Rea
(11:24) Thanks for Christmas / The Three Wise Men
(11:37) Wondeful Christmastime (Edited Version) / Paul McCartney
(12:13) Step Into Christmas / Elton John
(12:25) Christmas Is the Time to Say I Love You / Billy Squier
(12:50) I Wish It Could Be Christmas Every Day / Wizzard
12/20(木)
(11:05) Sleigh Ride / The Ronettes
(11:22) Winter Wonderland / Darlene Love
(11:34) Rockin’ Around The Christmas Time / Brenda Lee
(11:39) Little Saint Nick / The Beach Boys
(12:17) Parade of the Wooden Soldiers / The Crystals
(12:51) The Chipmunk Song (Christmas Don’t Be Late) / The Chipmunks
12/21(金)
(11:03) All I Want for Christmas Is You / Mariah Carey
(11:40) My Gift to You / Alexander O’Neal
(12:15) Santa Calus Is Coming to Town / The Whispers
クイーンの曲と年末の雰囲気って結構相性がいいんじゃないかと思うんです。クイーンの曲は普通に聴いてもドラマチックで荘厳な魅力がありますが、オーディエンスの大合唱が加わるライブの場になるとそれが倍増するんdねすよ。これがまた年の瀬の厳かなムードにばっちりハマるんです。ひょっとしたら、数十年後には年末の風物詩として「第九」と共に「We Are The Champions」が歌われるようになるかもしれない(笑)。
M1 Bohemian Rapsody (Live at Webley Stadium, July 1986) / Queen
【高橋芳朗】
続いて2曲目。クイーンのライブのハイライトといえばこれに決まり、という方も多いのではないでしょうか。「Bohemian Rapsody」と同じアルバム『Night at the Opera』収録の「Love of My Life」です。この「Love of My Life」、スタジオバージョンはピアノがリードしていく曲になるんですけど、ライブではブライアン・メイがつまびくアコースティックギターに乗せてフレディ・マーキュリーが歌って、そのふたりのパフォーマンスに促されるようにして観衆が大合唱するという。これがクイーンのライブのひとつの様式になっていました。
M2 Love of My Life (Live in Argentina, June 1979) / Queen
【高橋芳朗】
では最後の曲にいってみましょう。3曲目は1992年4月20日、これもロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されたフレディ・マーキュリー追悼コンサートより、ジョージ・マイケルをボーカルに迎えたクイーンの演奏で「Somebody to Love」。これはフレディ・マーキュリーが亡くなって約5ヶ月後に開催されたコンサートですね。デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン、ガンズ・アンド・ローゼズ、メタリカなど、錚々たるアーティストがフレディ・マーキュリーを除いた3人のクイーンと共演しているんですけど、中でも名演として伝説化しているのがこのジョージ・マイケルのパフォーマンスになります。
ジョージ・マイケル自身、フレディ・マーキュリーをめちゃくちゃ崇拝していたんです。だからこの共演には特別な思い入れがあったようで、彼はこんなコメントを残しています。「クイーンの曲、特に『Somebody to Love』を歌うなんて信じられない気分だった。僕のキャリアにおいても最も誇らしい瞬間だったね」と。
M3 Somebody to Love (Live at Webley Stadium, April 1992) / Queen & George Michael
【高橋芳朗】
スタジオではジェーン・スーが曲に合わせて熱唱しておりまして(笑)。ジョージ・マイケル&クイーンfeat.ジェーン・スーによる「Somebody to Love」が繰り広げられていました。その模様はのちほど番組のSNSにアップされると思いますが……なんでもジェーン・スーさんにとってはこのジョージ・マイケル&クイーンの「Somebody to Love」が人生ベストライブテイクだそうで。
(11:06) Santa Claus Is Coming to Town / Ella Fitzgerald
(11:23) Happy Holiday / Peggy Lee
(11:35) It’s the Most Wonderful Time of the Year / Andy Williams
(12:12) Jingle Bells / Frank Sinatra
(12:21) Cool Yule / Louis Armstrong
(12:52) Shake Hands with Santa Claus / Louis Prima
12/25(火)
(11:05) This Christmas / Donny Hathaway
(11:23) I Saw Mommy Kissing Santa Claus / Jackson 5
(11:35) Jingle Bells / Smokey Robinson & The Miracles
(12:12) Santa Claus Go Straight to the Ghetto / James Brown
(12:21) Christmas Love / The New Rotary Connection
(12:51) Someday at Christmas / Stevie Wonder
12/26(水)
(11:05) More Today Than Yesterday / The Spiral Starecase
(11:22) Take a Girl Like You / The Foundations
(11:35) Lovin’ You Baby / White Plains
(12:14) Take Away the Emptiness / Pickettywitch
(12:22) Where Did You Come From / Lulu
(12:51) You Misunderstand Me / The Buckinghams
12/27(木)
(11:06) A Kind of Magic / Queen
(11:34) Never Let Me Down / David Bowie
(12:14) When Tomorrow Comes / Eurythmics
(12:21) It Doesn’t Have to Be This Way / The Blow Monkeys
(12:49) SUPER GIRL / 岡村靖幸
12/28(金)
(11:04) Run Away / The Salsoul Orchestra
(11:23) Dreamin’ / Loleatta Holloway
(11:38) Everyman / Double Exposure
(12:13) Love Is You / Carol Williams
【高橋芳朗】
訃報ということではミシェル・ルグランの死去が報じられた3日後の29日、クインシー・ジョーンズに見出されてグラミー賞も受賞したアメリカのR&Bシンガー、ジェイムス・イングラムも亡くなっています。実は彼がパティ・オースティンとデュエットしたヒット曲、バート・レイノルズとゴールディ・ホーンが主演した映画『結婚しない族』の主題歌「How Do You Keep The Music Playing」はミシェル・ルグランが書いた曲なんですよ。
一方、ダメだったという方。「メダカ」さん。「小学生の頃に『アンブレイカブル』を見た時は自分の中の『ヒーロー vs 悪役』の常識が揺さぶられて衝撃を受けました。悪役がいるからこそヒーローが生まれるという矛盾はその後の『ダークナイト』でも大きなテーマとなっていますよね。また同時に『X-MEN』に代表されるような特異な能力を持つ者としての苦悩も描かれていて、まさにヒーロー映画の闇をまるっと詰め込んだような作品だったのですが……こうしたテーマを孕んだシリーズ作品のオチとして『ミスター・ガラス』のラストは物足りなく感じました。
「オレみたいな人間がいる意味」っていうのを見つけるためにスーパーヒーローを探そうとする。そしてそのために、実は長大な、そして恐ろしい計画、まさにマスタープランを実行してきたという、非常に忘れがたい、まあ切ないキャラクターなんですよね。『アンブレイカブル』のラストですね、そのイライジャが、「They call me Mr.Glass!」って叫ぶその悲痛さ。そして、それを背に受けながら「ああー……」って出ていくブルース・ウィリスの……「あーあ……」っていう顔で出ていくところで『アンブレイカブル』は終わりますけども。あのエンディングを思い出すだけで僕は、やっぱり泣けて泣けてしょうがない、っていう感じなんですけども。
で、まあとにかくこの両者の活動を描いて、その両者がついに対決するという、さっき言った通り本来『アンブレイカブル』に盛り込まれる予定だった、まさしくアメコミヒーロー物的な、「スーパーヒーロー vs スーパーヴィラン」の戦いというのがまず描かれる。で、まあ要は最悪『アンブレイカブル』『スプリット』の両方をちゃんと見てなくても、ある程度の事情が分かるような説明が込みで描かれるという。ただ、それは本作においてはまだ、ただのキャラクター紹介に過ぎないわけですね。本題は、そこから彼らがですね、ミスター・ガラスと同じ精神病院に収容された、その先から始まるわけです。本題は。
【高橋芳朗】
ここではそんななかから、スタイル・カウンシルの「A Solid Bond in Your Heart」を聴いてもらいたいと思います。1983年の作品です。これはぐいぐい煽っていくアッパーな曲調も非常にノーザンソウル的なんですけど、ミュージックビデオがノーザンソウルのパーティーのトリビュートになっているんですよ。映画鑑賞後に見るといろいろと合点がいくと思います。
M3 A Solid Bond in Your Heart / The Style Council
【高橋芳朗】
ノーザンソウルのスピリットを継承するアーティストの作品をもう1曲紹介しますね。デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「Seven Days Too Long」、1980年の作品です。デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズは1982年に全米1位になった「Come On Eileen」のヒットでおなじみですね。
この「Seven Days Too Long」を収録したデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのデビューアルバムのタイトルは『Searching for the Young Soul Rebels』。「若き魂の反逆児を求めて」みたいな意味になるんですけど、まさに映画『ノーザン・ソウル』に登場するようなやり場のないフラストレーションを抱えた若者がそのままマイクをつかんで歌い出したような、そんな無骨な魅力がある曲です。
この「Seven Days Too Long」は実際にノーザンソウルのパーティーで人気があったチャック・ウッドというソウルシンガーの曲のカバーになります。
(11:07) Ventura Highway / America
(12:35) Learn How to Fall / Paul Simon
(12:16) One Man Parade / James Taylor
(12:51) 風来坊 / はっぴいえんど
2/5(火)
(11:03) I’ll Be Around / The Spinners
(11:24) You Ought to Be With Me / Al Green
(11:35) Keep Gettin’ It On / Marvin Gaye
(12:11) Since I Found My Baby / Cornelius Brothers & Sister Rose
(12:51) 少しだけ片想い / 荒井由実
2/6(水)
(11:03) I’ll Be AroundSubstitute〜恋のピンチ・ヒッター〜 / The Who
(11:21) She’s Got Everything / The Kinks
(11:36) Have You Ever Loved Somebody / The Searchers
(12:13) Colour Blue / Peter & Gordon
(12:24) I Can’t Let You Go / The Hollies
(12:50) You’ve Got Your Troubles / Chad & Jeremy
2/7(木)
(11:02) A Message to You Rudy / The Specials
(11:23) Lip Up Fatty / Bad Manners
(11:38) Carry Go Bring Home / The Selecter
(12:10) Hands Off…She’s Mine / The Beat
(12:21) Easy Life / The Bodysnatchers
(12:50) Human Touch / Elvis Costello & The Attractions
2/8(金)
(11:03) Let’s Go Round Again / Average White Band
(11:21) Time / Light of the World
(11:34) Love Can’t Come / The Invisible Man’s Band
(12:15) Candidate for Love (Single Version) / T.S. Monk
【高橋芳朗】
最後はアリシア・キーズの曲で締めくくりたいと思います。今日は割としっとりめの曲ばかりかけてきたので、ラストは元気なエンパワーメントソング「Girl On Fire」でいってみましょう。これは2012年リリースのヒット曲で、女性の権利向上を訴えるウィメンズマーチでも歌われているフェミニストアンセム。「あの女の子は燃えるような情熱を秘めている」と歌い上げる力強いメッセージソングです。
(11:13) The Way It Is / Bruce Hornsby & The Range
(11:29) Little Lies / Fleetwood Mac
(11:38) We’ll Be Together / Sting
(11:46) Sledgehammer / Peter Gabriel
(12:13) Out of Touch / Daryl Hall & John Oates
(12:23) Higher Love (Single Version) / Steve Winwood
2/12(火)
(11:05) It’s Too Late / Carole King
(11:24) Carey / Joni Mitchell
(11:35) Reason to Believe / Carpenters
(12:14) The Only Living Boy in New York / Simon & Garfunkel
(12:26) If Not for You / Bob Dylan
(12:49) Everyone / Van Morrison
2/13(水)
(11:04) Hazy Shade of Winter~冬の散歩道~ / The Bangles
(11:28) Change of Heart / Cyndi Lauper
(11:38) Would I Lie to You?~ビリーヴ・ミー~ / Eurythmics
(12:14) You Caught Me Out / Tracey Ullman
(12:24) Turn to You / Go-Go’s
2/14(木)
(11:03) 美空ひばり – L-O-V-E (1965)
(11:19) Blossom Dearie – Put On a Happy Face
(11:30) Nina Simone – This Year’s Kisses
(11:38) Shirley Horn – Yes, I Know When I’ve Had It
(12:14) Nancy Wilson – Wives and Lovers
(12:50) Joanie Sommers – A Wonderful Day Like Today
2/15(金)
(11:04) Everybody Dance / Chic
(11:22) Music’s Takin’ Over / The Jacksons
(11:33) Forever Came Today / Shalamar
(12:12) Smooth Talk / Evelyn Champagne King
主演はジョンス役に、映画『ベテラン』の悪役でも――「KEN THE 390似だ」とか言って当時僕、すごく騒いでいましたけども(笑)――おなじみのユ・アインさん。そしてベン役にテレビドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズのスティーブン・ユァン。ヘミ役に新人女優のチョン・ジョンソさん、ということでございます。
高橋芳朗:3曲目は、フィオナ・アップルの「Waltz (Better Than Fine)」。2005年の作品です。フィオナ・アップルはニューヨーク出身の女性シンガーソングライター。1996年のデビューアルバム『Tidal』がいきなり全米で300万枚のセールスを記録する大ヒットになりました。90年代を代表する女性シンガーソングライターといえるでしょうね。先ほどのジョアンナ・ニューサムを妖精とするならば、このフィオナ・アップルはさしずめ王女や魔女といったところ。圧倒的な威厳と気品を感じさせるワルツソングです。
(11:05) We Gotta Get You a Woman / Todd Rundgren
(11:23) Back On My Feet / Al Kooper
(11:34) We Were Always Sweethearts / Boz Scaggs
(12:14) Somebody Like Me / Bobbie Gentry
(12:23) Glory Glory / The Rascals
(12:50) Lowdown / Chicago
2/19(火)
(11:04) When Love Breaks Down / Prefab Sprout
(11:26) Lucky /The Style Council
(11:36) Don’t Be Scared of Me / The Blow Monkeys
(12:16) Safe As Houses / China Crisis
(12:26) Ragman / Deacon Blue
(12:51) これは恋ではない / PIZZICATO FIVE
2/20(水)
(11:05) Young Americans / David Bowie
(11:23) New York City〜ニューヨークの貴婦人〜 / T. Rex
(11:35) Houses of the Holy〜聖なる館〜 / Led Zeppelin
(12:12) This Song / George Harrison
(12:24) Do You Want to Dance?〜踊ろよベイビー〜 / John Lennon
2/21(木)
(11:03) Rescue Me / Fontella Bass
(11:20) I Do / The Marvelows
(11:32) The Clapping Song / Shirley Ellis
(11:38) Papa’s Got a Brand New Bag / James Brown & The Famous Flames
(12:16) Shotgun / Jr. Walker & The All Stars
2/22(金)
(11:03) I Got My Mind Made Up (You Can Get it Girl) / Instant Funk
(11:21) So Strange / Phyllis Hyman
(11:32) Feed the Flame / Lorraine Johnson
(11:45) No Goodbyes / Curtis Mayfield
(12:14) What You Gave Me / Diana Ross
という風に、かようにですね、しっかり観客をハラハラドキドキさせる劇映画としてのサービス性も、実は周到に組み込まれてるんですよ。非常に淡々とした語り口に見えるけど、実はちゃんとエンタメしている、っていうところ。ここが非常に感心させられる。でも……これは、やっぱりデイミアン・チャゼルの映画でもある、っていうことですね。最終的に、国家の威信も、そして社会の状況も……社会の状況っていうのを示すのに、本当はこれ、1970年リリースなんで嘘なんですけど、ギル・スコット・ヘロンの有名な「Whitey On the Moon」っていうポエトリー・リーディングというか、ラップの元祖とも言われる曲を、あえてそこに持ってきて。
あえてその「Whitey On the Moon」の歌詞に託して、説明的でなくアポロ計画を時代状況的には相対化してみせる、という。説明的でなく説明してみせる、このバランス感覚。やっぱり、ああ上手いな、ちょっと憎らしいぐらいだな、なんて思ったりもしますね。で、最終的に全て、主人公たちだけの世界、という風になっていく。で、その他のことは全て……要するに、国家の威信も、社会状況も、むしろ後景と化していく、っていうことですね。
(11:06) Rosanna / TOTO
(11:22) Baby Says No / Christopher Cross
(11:33) What Can I Say / Chicago
(12:14) Ain’t Nothing Like the Real Thing / Angela Bofill & Boz Scaggs
(12:25) Where Did We Go Wrong / Marc Jordan
2/26(火)
(11:06) I Like It / DeBarge
(11:25) Human Nature / Michael Jackson
(11:35) Little Red Corvette / Prince
(12:12) Popcorn Love / New Edition
(12:22) You’ll Never Find / Janet Jackson
2/27(水)
(11:05) D’yer Mak’er / Led Zeppelin
(11:23) Mother and Child Reunion〜母と子の絆〜 / Paul Simon
(11:35) Jamaica Jerk-Off〜碧の海ジャマイカにおいで〜 / Elton John
(12:13) Swing Low Sweet Chariot 〜揺れるチャリオット〜 / Eric Clapton
(12:24) Half Caste / Thin Lizzy
(12:50) Exotica Lullaby / 細野晴臣
2/28(木)
(11:06) California Dreamin’ / Mamas & Papas
(11:25) The World Turns All Around Her / The Byrds
(11:39) Baby, You’re Free / The Cyrkle
(12:10) Take a Giant Step / The Monkees
(12:22) Darlin’ Companion / The Lovin’ Spoonful
(12:51) Along Comes Mary / The Association
3/1(金)
(11:04) Getaway / Earth Wind & Fire
(11:26) Space Age / The Jimmy Castor Bunch
(11:35) Double Dutch / The Fatback Band
(12:10) Shake Your Rump to the Funk / The Bar-Kays
「……さらにそのイメージは新約聖書に登場するマグダラのマリアにつながっています。映画中盤、年越しホームパーティーの場面でターンテーブルに1970年にリリースされたロイド・ウェバーのロックオペラ『ジーザス・クライスト・スーパースター』のLPレコードが置かれ、そこから流れるのがマグダラのマリアの歌『I Don’t Know How To Love Him(私はイエスがわからない)』であるということからキュアロンの意図を明確に示しています」というね。
【高橋芳朗】
メッセージソングが続いたので、最後は楽しいパーティーソングで締めくくりたいと思います。スペシャルAKAからスペシャルズに戻って「Enjoy Yourself (It’s Later Than You Think)」。1980年の作品です。サブタイトルの「It’s Later Than You Think」は「あなたが思っているほど人生は長くないんだよ」みたいな意味。だから「Enjoy Yourself」、つまり「もっと自分から楽しんでいこうぜ!」と歌っているわけですね。
M4 Enjoy Yourself(It’s Later Than You Think) / The Specials
(11:07) Save It for a Rainy Day / Stephen Bishop
(11:25) If You Should Fall / Ned Doheny
(11:36) Higher & Higher / John Valenti
(12:10) It Just Takes Awhile / Crackin’
(12:26) Soul Searching / Average White Band
(12:53) 何もいらない / 大貫妙子
3/5(火)
(11:06) Feel Like Makin’ Love / Roberta Flack
(11:26) Smile Please / Stevie Wonder
(11:39) Feelin’ Blue /Earth Wind & Fire
(12:11) Spread Us Around / Timmy Thomas
(12:50) 冬越え / 細野晴臣
3/6(水)
(11:05) Cruel to Be Kind〜恋するふたり〜 / Nick Lowe
(11:24) Oliver’s Army / Elvis Costello & The Attractions
(11:37) Girls Talk / Dave Edmunds
(12:17) Feel You Around Me / NRBQ
(12:51) Sentimental Fool / シーナ&ザ・ロケッツ
3/7(木)
(11:05) Upa Neguinho / Sergio Mendes & Brasil ’66
(11:23) Bim Bom / Astrud Gilberto
(11:39) The Sunny Side of the Street / Quarteto Em Cy
(12:10) Keep Talking / Mario Castro Neves & Samba S.A.
(12:21) E Preciso Cantar / Conjunto 3D
(12:51) Saiupa / Bossa Rio
3/8(金)
(11:04) The Glow of Love / Change
(11:22) Get Ready / Patti Labelle
(11:34) Never Gonna Give You Up / Patrice Rushen
(11:46) Saturday Night / Herbie Hancock
(12:10) Take it to the Limit / Norman Connors
ということで、代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「LA LA LAND」さん。「自分はヨルゴス・ランティモス監督のファンで、日本で公開されてる作品は全て見ており、特に『ロブスター』はオールタイム・ベスト級に好きな作品になりました。で、そんな人間から見て面白かった! ぶっちぎりで今年のベストワンです。ゲスなキャラクターたちに愛着をわかせる見事な脚本。魚眼を多様した撮影の生み出す不吉な映像。サンディ・パウエルの時代考証をすっ飛ばしたゴージャスでモダンでクールな衣装。そしてランティモス的な悪趣味を含めつつ、テンポのアップダウンを利用した見事な演出。それらが生み出す長大な化学反応はいつまでも見ていたいと思えるようなとても心地よいものでした。そして何より、並外れた役者陣の演技は化学反応に大きな力を与えてると思います」。
【高橋芳朗】
3万5000回ね(笑)。そんなハル・ブレインの名演の中でも、特によく知られているのがガールグループのロネッツの1963年のヒット曲「Be My Baby」。今日はこのハル・ブレインがドラムを叩いているポップミュージック史で最も有名なイントロのひとつ、「Be My Baby」の影響を聴いていきたいと思います。「Be My Baby」のイントロってわかります? (机を叩いて)「ドンドドンッ、パンッ! ドンドドンッ、パンッ!」。
【堀井美香】
ああーっ!
【ジェーン・スー】
このリズムはここから始まったってことだよね?
【高橋芳朗】
うん、そういうことです。
M1 Be My Baby / The Ronettes
【高橋芳朗】
実は「Be My Baby」のこの「ドンドドンッ、パンッ!」のリズムパターン、アクシデントから生まれたそうなんですよ。
【高橋芳朗】
そう、ヲタ芸もここからきてるんだもんね。じゃあ、ここでちょっと「Be My Baby」のドラムパターンにインスパイアされたヒット曲をいくつか集めてみたので聴いてみましょうか。まずはこちら、洋楽ポップスとしてはこれがいちばん有名かな?
M2 Say Goodbye to Hollywood / Billy Joel
【高橋芳朗】
堀井さんが大好きな人ですよ。
【堀井美香】
ああ、もう大好きです(笑)。
【高橋芳朗】
これは誰の曲でしょう?
【堀井美香】
ビリー・ジョエルでございます。
【高橋芳朗】
正解です! これはもう思いっきり「ドンドドンッ、パンッ!」のリズムパターンですね。
【ジェーン・スー】
浜省にもこういうのあるよね。
【高橋芳朗】
ありますあります。佐野元春さんにもありますね。「Say Goodbye to Hollywood」は本家ロネッツのリードボーカル、ロニー・スペクターがカバーしていたりします。
【ジェーン・スー】
へー!
【高橋芳朗】
じゃあ次いってみましょう。これはちょっとわからないかもしれないけど、どうかな?
M3 Just Like Honey / The Jesus & Mary Chain
【高橋芳朗】
これはオルタナティブロック系です。
【ジェーン・スー】
リスナーさんでわかる人はわかってるんじゃないかな?
【高橋芳朗】
これはソフィア・コッポラの映画『ロスト・イン・トランスレーション』のエンドロールでかかる曲。ジーザス&メリー・チェインの「Just Like Honey」です。「Be My Baby」のイントロはビリー・ジョエルみたいな王道のポップスはもちろん、こういうオルタナティブロックでも使われているんですね。
【高橋芳朗】
わかります? 最近朝ドラの『半分、青い。』で挿入歌として流れていたシーナ&ザ・ロケッツの「You May Dream」。
【ジェーン・スー】
このリズムを使った曲は必然的に甘酸っぱくなるんだね。
【高橋芳朗】
うんうん。これはプロデューサーの細野晴臣さん一流の遊び心が発揮された感じですね。最後はこちら。これは思いっきり「Be My Baby」です。
M6 世界中の誰よりきっと / 中山美穂 & WANDS
【ジェーン・スー】
ああーっ! ミポリン!
【高橋芳朗】
そう、中山美穂さんとWANDSですね。
【ジェーン・スー】
「世界中の誰よりきっと♪」
【高橋芳朗】
こんな感じで「Be My Baby」のイントロのドラムパターンは至るところで使われているんですけど、ここからはわたくし高橋芳朗が選んだ「Be My Baby」のイントロに影響を受けた曲の傑作選を2曲、洋楽と邦楽で1曲ずつ紹介したいと思います。まず1曲目、洋楽編はニューヨークの女性シンガーソングライター、ラナ・デル・レイとR&Bシンガーのザ・ウィークエンドがコラボした「Lust for Life」。これは2017年、最近の作品です。この曲はミュージックビデオを見てもらえばわかると思うんですけど、ロネッツ「Be My Baby」の直球オマージュ。ロネッツのオールディーズ感覚を見事に現行のポップミュージックのモードに落とし込んでいます。めちゃくちゃ遅くてものかなしいけど「Be My Baby」のビートはしっかり鳴ってるので注意して聴いてみてください。
【高橋芳朗】
というわけでロネッツ「Be My Baby」のイントロのオマージュ作品、洋楽邦楽といろいろと聴いてきました。このリズムを使った曲はまだまだ大量にあるので、皆さんのライブラリからも「ドンドドンッ、パンッ!」を探してみてはいかがでしょう。あと、ハル・ブレインについてより詳しく知りたい方はドキュメンタリー映画『レッキング・クルー 伝説のミュージシャンたち』をチェックしてみてください。アマゾンなどで配信されています。
(11:09) Glamour Profession / Steely Dan
(11:28) Give it to the Kids / Ben Sidran
(11:37) I Did it All for Love / Robert Byrne
(12:14) The Wonder of it All / Adrian Gurvitz
(12:25) Let’s Just Live Together / Brian Elliot
(12:49) 愛は思うまま / 吉田美奈子
3/19(火)
(11:05) I Only Want to Be with You / Dusty Springfield
(11:27) 442 Glenwood Avenue / The Pixies Three
(11:38) Young Lovers /Lesley Gore
(12:13) He’s So Fine / The Chiffons
(12:23) I’m Into Something Good / The Cookies
(12:51) Do-Wah-Diddy / The Exciters
3/20(水)
(11:05) Radio Radio / Elvis Costello & The Attractions
(11:23) So It Goes / Nick Lowe
(11:35) Poison Ivy / The Lambrettas
(12:15) Hey Little Rich Girl 〜哀しきディスコ・レイディ〜 / The Specials
(12:50) トランジスタ・ラジオ / RCサクセション
3/22(金)
(11:04) Ten Percent / Double Exposure
(11:19) Chances Go Around / First Choice
(11:31) More / Carol Williams
(12:11) We’re Getting Stronger / Loleatta Holloway
【高橋芳朗】
『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』などでおなじみスパイク・リー監督の映画『ブラック・クランズマン』。第91回アカデミー賞で脚色賞を受賞したことでも話題になったスパイク・リー監督の最新作が3月22日より公開になりました。今日はこの『ブラック・クランズマン』のエンドロールで流れるプリンスの「Mary, Don’t You Weep」についてお話ししたいと思います。まずは映画の概要を説明しますね。
【高橋芳朗】
すいません(笑)。この『ブラック・クランズマン』、いまの説明にもあるように緊張と緩和を織り交ぜたストーリー運びが絶妙なんだけど、最終的にはハードな現実を正面から思いっきり突きつけてきます。まさに人種差別問題の根深さを改めて思い知らされる内容になっているんですが、そんな映画の最後、エンドロールで流れる曲がプリンスの「Mary, Don’t You Weep」になります。
M1 Mary, Don’t You Weep / Prince
【高橋芳朗】
この「Mary, Don’t You Weep」はプリンスが1983年に残したピアノの弾き語りによる未発表音源集『Piano & a Microphone 1983』に収録されている曲なんですけど、実はプリンスのオリジナル曲ではありません。南北戦争以前、19世紀から歌われている黒人霊歌なんですよ。1960年代にはフォークシンガーのピート・シーガーが歌ったことによって公民権運動のキャンペーンソングとしてリバイバルしました。
つまり「Mary, Don’t You Weep」は要約すると「神様は信じる者を守って、いずれ悪を罰してくれる」という歌になります。だから『ブラック・クランズマン』は非常にヘビーな後味の映画ですけど、最後にこの「Mary, Don’t You Weep」を流すことによって希望や救い、祈りを提示していると。神様はいずれ悪を罰してくれる、差別主義者はいつか必ず滅びるだろうと暗に示しているわけです。
そして、いま流れているピート・シーガーのものと共に「Mary, Don’t You Weep」のよく知られているバージョンがゴスペルグループのスワン・シルバートーンズによる録音になります。これもピート・シーガーと同じ1959年の作品ですね。
M3 Mary, Don’t You Weep / Swan Silvertones
【高橋芳朗】
ピート・シーガーのものともまたちょっと印象が違いますね。
【ジェーン・スー】
ああ、本当だ。ぜんぜん違うね。
【高橋芳朗】
このスワン・シルバートーンズの「Mary, Don’t You Weep」は途中にアドリブでこんなフレーズが入るんですよ。「I’ll be a bridge over deep water if you trust in my name」。直訳すると「私を信じるならば私は深い海に架かる橋になろう」みたいな意味になるんですけど、実はこのフレーズにインスパイアされて作られたのがサイモン&ガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water」(明日に架ける橋)なんです。1970年の大ヒット曲。
【ジェーン・スー】
へー、そうなんだ!
【高橋芳朗】
「明日に架ける橋」はベトナム戦争や公民権運動で混迷するアメリカの社会情勢を受けて作られた曲で、歌詞の大意はこんな内容です。「君が苦しんでいるときは僕が支えになろう。荒れる海に架かる橋のように、自分の身を投げうってでも君の力になろう」と。これはもう完全に「Mary, Don’t You Weep」の意義を継承した歌と言っていいでしょうね。
「明日に架ける橋」の成り立ちは同じように黒人霊歌の「No More Auction Block」にインスパイアされて作られて公民権運動のアンセムになったボブ・ディランの「風に吹かれて」(Blowin in The Wind)に非常によく似ていますが、「明日に架ける橋」も「風に吹かれて」も両方ともゴスペルのスタンダードになっているのはこういう黒人霊歌に基づくバックグラウンドによるところも大きいのではないかと。「明日に架ける橋」は皆さんよくご存知の曲だと思いますが、こうした背景を踏まえるとまた聞こえが変わってくるのではないでしょうか。
で、この「明日に架ける橋」、そして「明日に架ける橋」のインスパイア源になった「Mary, Don’t You Weep」、両方の曲を歌っているシンガーがいるんですよ。それは昨年他界したソウルの女王、アレサ・フランクリン。
【ジェーン・スー】
さすが。すべてを自分の曲にする女!
【高橋芳朗】
フフフフフ。アレサ版の「Mary, Don’t You Weep」は1972年、教会で行ったライブパフォーマンスを収めたゴスペルの名盤『Amazing Grace』に収録されています。
M5 Mary, Don’t You Weep / Aretha Franklin
【高橋芳朗】
そしてアレサ・フランクリンとスパイク・リーといえば、スパイク・リー監督の1992年の映画『マルコムX』。あの映画のエンドロールで流れる曲はアレサ・フランクリンが歌うダニー・ハサウェイのカバー「Someday We’ll All Be Free」(いつか自由に)でした。ダニー・ハサウェイの「Someday We’ll All Be Free」も公民権運動の盛り上がりを受けて作られた曲で「いつの日か我々は自由になるんだ」というメッセージソング。『ブラック・クランズマン』の最後に流れる「Mary, Don’t You Weep」も『マルコムX』の最後に流れる「Someday We’ll All Be Free」も、両方とも未来に希望をつなげるという意味で映画のなかで同じような役割を果たしているんですね。
M6 Someday We’ll All Be Free / Aretha Franklin
【高橋芳朗】
ただ、『ブラック・クランズマン』の最後に流れる「Mary, Don’t You Weep」も『マルコムX』の最後に流れる「Someday We’ll All Be Free」も両方とも希望を提示しているとも言えるんだけど、公民権運動の時代に民衆を鼓舞していた曲をいまもこうして歌い続けなくてはいけないということは、まだまだ戦いは続いているということ、まだまだ問題は解消されていないということでもあるわけです。「Black Lives Matter」時代のアメリカ、トランプ政権下のアメリカの現状を知る意味でも『ブラック・クランズマン』、必見の一本です。
(11:05) If You Were There / Wham!
(11:21) Heaven Is a Secret / Spandau Ballet
(11:32) I Cannot Believe It’s True / Phil Collins
(11:41) Last Chance / Level 42
(12:11) Marine Boy / Haircut 100
(12:25) TKO / Elvis Costello & The Attractions
(12:51) ストレート・ライフ / 上田正樹
3/26(火)
(11:07) Love The One You’re With /Stephen Stills
(11:25) I Can’t Hear You No More / Carole King
(11:37) Domino / Van Morrison
(12:13) Love’ll Get You Hight /Jo Mama
(12:23) Ready for Love /The Rascals
3/27(水)
(11:05) Cool Jerk / The Capitols
(11:21) Baby Don’t You Do It / Marvin Gaye
(11:35) You’ve Been Cheatin’ / The Impressions
(12:13) Do I Love You / Frank Wilson
(12:50) そんなに悲しくなんてないのさ / 古市コータロー
3/28(木)
(11:03) Waiting in Vain / Bob Marly & The Wailers
(11:40) Can’t Go Through With Life / Marie Pierre
(11:14) Once Upon a Time / The Main Attractions
(12:22) Silly Games / Janet Kay
(12:49) コンポジション・1 / 南佳孝
3/29(金)
(11:03) Rock the Boat / The Hues Corporation
(11:23) More, More, More / Andrea True Connection
(11:36) Casanova Brown / Gloria Gaynor
(12:09) Spring Affair / Donna Summer
【高橋芳朗】
うん。しかも、お父さんに射殺されるという本当に悲しい最期でした。そんなマーヴィン生誕80年を祝して、3月29日には1972年に発売されるはずだったもののお蔵入りになっていた未発表アルバム『You’re the Man』のリリースが実現しています。本日はそのマーヴィン・ゲイが与えた影響、マーヴィン・ゲイのオマージュ曲を聴いていきましょう。まずは先週金曜日にリリースされた『You’re the Man』から1曲紹介したいと思います。
(11:02) Move On Up / Curtis Mayfield
(12:21) Family Affair / Sly & The Family Stone
(12:47) 返事はいらない / 荒井由実
※新元号発表のため番組内容を変更してお送りしました。
4/2(火)
(11:05) What ‘Cha Gonna Do for Me / Ned Doheny
(11:25) We Can Work it Out / Chaka Khan
(11:39) I Don’t Want You Anymore / Tavares
(12:12) Win or Lose / Earth Wind & Fire
(12:23) Shine / Average White Band
(12:51) メビウスの輪 / 大橋純子
4/3(水)
(11:05) Don’t Get Me Wrong / The Pretenders
(11:26) Walking Down Your Street / Bangles
(11:37) And She Was / Talking Heads
(12:11) Season Cycle / XTC
(12:24) Press / Paul McCartney
(12:49) B TO F / ムーンライダーズ
4/4(木)
(11:05) Love So Fine / Roger Nichols & The Small Circle of Friends
(11:34) Within You / Inner Dialogue
(11:38) Hope / The Carnival
(12:15) Rene de Marie / Triste Janero
(12:25) Masquerade / Sergio Mendes & Brasil ’66
(12:52) 美しい朝 / 赤い鳥
4/5(金)
(11:04) Celebration / Kool & The Gang
(11:24) Get On the Floor / Micheael Jackson
(11:35) Let’s Spend Some Time / Slave
(12:10) Got to Love Somebody / Sister Sledge
【ジェーン・スー】
私はピーター・アレン「Don’t Wish Too Hard」とジノ・ヴァネリ「Jack Miraculous」が好きだったな。
【堀井美香】
私も3曲目のジノ・ヴァネリ。
【高橋芳朗】
みんななんだかんだ客観性のないやつが好きなんじゃん(笑)。
【堀井美香】
ジノ・ヴァネリはスピード違反で警察に捕まった感覚……。
【高橋芳朗】
フフフフフ、スピード違反ね。それから『ヨット・ロック』の刊行に合わせてそのサウンドトラックと言えるようなコンピレーションアルバム『This Is Yacht Rock』が4月24日にワーナーミュージックからリリースされます。CD2枚組で36曲収録。ヨットロックの入門編として、そちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
(11:04) Nothin’ You Can Do About It / Leslie Smith
(11:26) I Want Love to Fine Me / Brenda Russell
(11:37) Look Who’s Lonely Now / Randy Crawford
(12:12) Take Me to Your Heaven / Stevie Woods
(12:23) If You Don’t Want My Love / Bobby King
(12:50) 純情 / 尾崎亜美
4/9(火)
(11:04) Breakout / Swing Out Sister
(11:24) New Day for You / Basia
(11:37) It Didn’t Matter / The Style Council
(12:14) Laying On the Sofa / Isabelle Antena
(12:50) Super Girl / 岡村靖幸
4/10(水)
(11:04) Alphabet St. / Prince
(11:23) The Way You Make Me Feel / Michael Jackson
(11:36) Love of a Lifetime / Chaka Khan
(12:12) Fool’s Paradise / Meli’sa Morgan
(12:24) Happy / Surface
4/11(木)
(11:05) The Drifter / Harpers Bizarre
(12:21) Someday Man / The Casuals
(12:36) Bitter Honey / The Holy Mackerel
(12:12) Out in the Country / Three Dog Night
(12:21) I Kept On Loving You / Carpenters
(12:52) We’ve Only Just Begun / Mark Lindsay
4/12(金)
(11:04) The Boss / Diana Ross
(11:26) Let Me Down Easy / First Choice
(11:35) I Want to Give You Me / Inner Life
(12:12) It’s a Better Than Good Time / Gladys Knight & The Pips
【ジェーン・スー】
ビヨンセに『4』というタイトルのアルバムがあるんですよ。「4」は彼女にとって重要な数字、運のいい数字らしいんだけど、その『4』に収録されている「Love On Top」です。これは「あなたは私の愛を最優先にしてくれた」という歌で、このラブソングをコーチェラの最後にファンに向けて歌うという。ライブバージョンをかけるとネタバレになっちゃうからスタジオバージョンで聴いてもらいましょう。
(11:04) Woman / John Lennon
(11:25) Arrow Through Me / Wings
(11:36) Love Comes to Everyone / George Harrison
(12:13) Last Train to London / Electric Light Orchestra
(12:23) Second Nature / Utopia
(12:53) じゃじゃ馬娘 / 大貫妙子
4/16(火)
(11:06) Road to Nowhere / Talking Heads
(11:28) Graceland / Paul Simon
(12:14) You and I Part II / Fleetwood Mac
(12:26) The Lazarus Heart / Sting
(12:51) 朝色のため息 / 高橋幸宏
4/17(水)
(11:04) Clean Up Woman / Betty Wright
(11:24) Express Yourself / Charles Wright & The Watts 103rd Street Rhythm Band
(11:36) Groove Me / King Floyd
(12:13) I’ll Take You There / The Staple Singers
(12:24) Mr. Big Stuff / Jean Knight
(12:50) ラヴ・スコール / サンドラ・ホーン
4/18(木)
(11:04) The 59th Street Bridge Song (Feelin’ Groovy) / Simon & Garfunkel
(11:20) You Baby 103rd Street Rhythm Band / The Mama’s and The Papa’s
(11:36) It’s Not Time Now / The Lovin’ Spoonful
(12:13) I Know That You’ll Be There / The Turtles
(12:51) Tomorrow’s Gonna Be Another Day / The Monkees
4/19(金)
(11:07) Shining Star / Earth Wind & Fire
(11:23) Dazz / Brick
(11:36) Free Yourself, Be Yourself / Brothers Johnson
(12:12) Girl, I Think the World About You / Commodores